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セレウス菌について
1 概論
 セレウス菌(Bacillus cereus:バシラス セレウス)は、本来土壌を住処としていますが、土壌以外に空気や河川水などの自然環境中に広く分布しています。したがって、特に自然環境と接触する可能性がある野菜、果物、穀類などから検出されますが、自然環境とはあまりつながりのない豆腐、麺類、練り製品、洋菓子、食肉製品などからも検出されることがあります。セレウス菌は、熱、酸・アルカリ、乾燥などに強い「芽胞」を形成することから、その制御方法には特に注意が必要です。セレウス菌の100℃でのD値は3分前後であることから、一般に100℃、30分間の加熱で死滅すると考えられます。
2 検査方法
 食材25g(25ml)を滅菌リン酸緩衝生理食塩水や滅菌生理食塩水などを用いて10倍希釈原液を調製し、必要に応じてさらに10倍段階希釈液を調製します。これらをNGKG寒天培地やMYP寒天培地、PEMBA寒天培地などに塗抹後、32℃で48時間培養します。
 培養後、Bacillus.cereus様集落として疑われる集落(マンニット非分解、レシチナーゼ陽性、ワックス状の粗造で湿潤な灰色〜暗灰色の集落)を無菌的に釣菌し、普通寒天培地などを用いて純培養を行います。
 純培養後の菌体について、グラム染色法による形態観察(グラム陽性有芽胞桿菌)並びにカタラーゼ産生能試験、VP試験、嫌気性条件下での発育能及びpH5.7での発育能に関する生化学的性状試験の結果が陽性であった場合、Bacillus.cereusと判定することが出来ます。
写真-1 NGKG寒天培地上の集落 写真-2 グラム染色の結果
3 食中毒の予防
 セレウス菌が原因で発症する食中毒には、二つのタイプがあります。一つは、セレウス菌が増殖する過程で食品中に産生される「セレウライド:cereulide」と呼ばれる嘔吐毒を産生する「嘔吐型食中毒」です。この毒素は熱に強く、121℃、90分間の加熱にも耐え、pH2〜10の範囲で安定であることが確認されています。従って、食品中に作られてしまったこの毒素に対する唯一の有効策として考えられるのは、加熱調理後長時間経過した食品は食べないようにすることです。もう一つはセレウス菌が増殖した食品を摂取することで発症する「下痢型食中毒」があります。腸に達したセレウス菌は、腸内で分子量約5万の「下痢毒」を産生し、この毒素の作用で下痢が発症します。但し、いずれの食中毒の場合も症状は比較的軽いため、概ね一両日中には快方へ向かいます。
 原因食品として、加熱調理を受けた食品(チャーハン、ゆでうどん、パスタ)などが挙げられますが、これはセレウス菌が「芽胞」を形成する細菌の一種であることに着目すると理解しやすいでしょう。例えば、少量のセレウス菌に汚染されていた米を用いて、チャーハンを大量に調理したとします。大部分の菌は、調理時の加熱により死滅してしまいますが、一部熱のかかりが弱かった部分に存在していた「芽胞」は、生きたまま残ることが出来ます。そして、チャーハンが徐々に冷めてきて、適切な温度が保たれた環境になると「芽胞」の状態から栄養型細胞へと変化し、冷蔵条件になるまで増殖を続けます。そして、増殖したセレウス菌を含む食品を摂取することで食中毒が発生することになるわけです。
 「温かいものは温かいうちに、冷たいものは冷たいうちに食べる」という基本に戻って日々の食生活を見直してみてはいかがでしょうか。
写真-3及び4 食中毒原因食材の一例(チャーハン、パスタ)
参考文献
1) 食品衛生衛生検査指針 微生物編 2004、(社)日本食品衛生協会
2) 食中毒の科学、本田武司 著、裳華房
3) 食品微生物の科学 食品微生物T 基礎編 清水潮 著
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