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黄色ブドウ球菌について
1.概論
 黄色ブドウ球菌は、食中毒起因菌のひとつで、ヒトや動物の化膿した部位、健康なヒトの鼻腔、咽喉、手指をはじめとして、直接手指が触れる可能性がある調理用器具や食品の製造環境などから比較的高率で検出されます。
 黄色ブドウ球菌は、食品中で増殖するとエンテロトキシンという毒素を産生し、このエンテロトキシンを含む食品を摂取することにより引き起こされる食物内毒素型食中毒の原因菌して広く知られています。
 なお、加熱処理によって黄色ブドウ球菌そのものを死滅させたとしても、エンテロトキシンは耐熱性を有することから、通常の加熱では壊れないので注意が必要です。
写真-1及び2 検査対象(食材と調理器具)
2.検査方法
 食品の10倍乳剤や食品の製造・調理環境の拭取り液をマンニット食塩寒天培地などのブドウ球菌選択分離培地に塗抹培養します。培養後、黄色ブドウ球菌が疑われる集落について、普通寒天培地など選択性のない寒天培地を用いて純培養を行います。純培養後得られた集落について、コアグラーゼ試験、クランピングファクター試験、顕微鏡観察、グラム染色などにより、黄色ブドウ球菌か否かを鑑別します。
写真-3 マンニット食塩寒天培地上の集落 写真-4 クランピングファクター試験(左:陰性、右:陽性)
3. 結果の解釈

 日本におけるブドウ球菌食中毒の原因食品は、以前はおにぎりが大半を占めていたものの、食品衛生に対する意識向上によって、現在はお弁当、おにぎりの順になってきています。また、ブドウ球菌食中毒が発症する場合、原因となる食品中には約cfu/gの黄色ブドウ球菌が確認され、その食品中にはブドウ球菌エンテロトキシンとして0.01〜1.2μg/g検出されるとの報告事例があります。
 暑い時期を迎え、食品の調理にはより一層注意を払われていると思います。ブドウ球菌食中毒を発症しないためにも、手指に化膿した部分や傷がないか、また、手指に傷を負った従業員が直接食品や調理器具に触れるような作業を行っていないか、手指の洗浄と消毒がマニュアル通り確実に実施されているかなどについてもう一度見直してみてはいかがでしょうか。

参考文献
1) 食品衛生衛生検査指針 微生物編 2004、(社)日本食品衛生協会
2) 食中毒の科学、本田武司 著、裳華房
3) 食品微生物の科学 食品微生物T 基礎編 清水潮 著
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