オクラトキシンの毒性については、1970年代より種々の動物を用いて精力的に研究が行われ、腎毒性、催奇形性、生殖毒性、神経毒性、発ガン性、遺伝毒性などがこれまでに報告されてきました。オクラトキシンAは下図に示したように、イソクマリン骨格にフェニルアラニンが結合した構造をしています。フェニルアラニンはアミノ酸ですので、オクラトキシンAはその代謝に拮抗し、タンパク合成を抑制し、毒性を表すと考えられますが、現在までに腎毒性、発ガン性や遺伝毒性のメカニズムは未だ解明されていません。しかし、動物実験においてはオクラトキシンAが発ガン性を有していることは間違いなく、国際癌研究機関(IARC)ではオクラトキシンAをグループ2B(ヒトに対して発ガン危険性の可能性がある)に分類しています。オクラトキシンAはヒトの血清タンパクであるアルブミンに強く結合し、長時間体内に残存する(ヒトにおける半減期は35日)ため、ヒトはオクラトキシンAの影響を受けやすいとも考えられています。このため、血液中のオクラトキシンA濃度を測定することにより、ヒトがどれだけのオクラトキシンを摂取しているかも明らかになります。事実、オクラトキシンA汚染濃度・頻度の高い穀類を主食とするヨーロッパでは、ヒト血液中のオクラトキシン濃度や頻度が高いことが報告されています。日本においても同様で、ヒト血液中のオクラトキシンA濃度はヨーロッパに比して低いが、その頻度は高いことが報告されており、わが国の食品がオクラトキシンAに汚染されている証拠ともなります。 |