昨年は、お菓子やコロッケ等の表示の問題がマスコミ等で大きく取り上げられ、消費者の関心を呼んだ。しかしながら、今年に入り、中国産冷凍ギョーザに含まれた農薬メタミドホスによる10人の健康被害が出て、消費者の食品に対する不安がいや応なく高まった。
食品を原因とする人の健康被害の点から見ると食中毒の発生を防ぐことは、消費者の食品に対する不安を少なくしていく上で何より重要であることに変わりはない。
食中毒の発生状況を見ると、平成18年では、発生件数1,132件、患者数38,667名、死亡者6名で、平成19年を見てもほぼ同じ状況にある。
ここ数年、ノロウイルスを原因とする食中毒が、件数、患者数とも圧倒的に多くなってきている。ノロウイルス食中毒の予防の最も大切なことは、食品に接触する従事者の健康管理にあり、その対策も進められているが、従事者の健康管理がいかに難しいかがその結果として現れている。
一方、近年、増加傾向にあるのがカンピロバクター・ジェジュニ/コリを原因とする食中毒で、平成18年は416件、患者数2,297名と細菌性食中毒では最も多くなってきている。
カンピロバクターは家畜、家禽が持っており、食中毒の原因食としては鶏肉が多く、よく焼かなかったり、鶏肉を処理した、まな板、包丁等の器具により鶏肉以外の食品が汚染された等が原因となっている。
食品の衛生的な取り扱いが向上してきている昨今においても、従来からの食中毒の防止の基本が依然、重要であることをものがたっている。すなわち、「付けない」、「増やさない」、「殺す」の三つである。
食品を原因とする感染症は従来の食中毒以外にも、ソフトチーズ、生ハム等に汚染されたリステリア・モノサイトゲネスによる脳炎、敗血症、流産、死産等が欧米で発生しており、わが国でも一部発生が報告されている。
また、昨年、わが国で始めて、エンテロバクター・サカザキによる低出生体重児の多発性脳膿瘍が報告され食品が原因と疑われている。
食品による人の健康被害の防止には、従来からの対策は当然のこととして、最新の食品による人の健康被害に関する情報入手に努め、的確な対応により消費者に迷惑をかけないようにしていくことが食品事業者にとっての責務である。 |