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遺伝子を指標とした検査手法〜LAMP法について〜
はじめに
 微生物検査は、培養試験がゴールドスタンダードであることから、これまで各検査項目に対して最適な培養基や検査キットの開発、改良などが進められてきました。検査時間の迅速化や簡便化は微生物検査にとって大きな課題の一つであり、これまでにも通常の培養期間よりも短時間で判定可能な培地や特別な検査機器等を必要としないキットが販売されています。
 今回ご紹介する「Loop-Mediated Isothermal Amplification Method:LAMP法」は、培養試験を主体とした検査ではなく、遺伝子を指標とした検査手法の一つです。本検査手法の認知度が高まった背景として、平成18年11月2日に「食安監発第1102004号 腸管出血性大腸菌O157及びO26の検査法について」に遺伝子検出法の一つとして採用されたことが挙げられます。
 なお、SUNATECでも昨年LAMP法を用いた検査手法を導入し、腸管出血性大腸菌O157及びO26について、検査時間の短縮、迅速化、(O26については)新規商品化を行っており、ご依頼者の方々から好評を頂いております。
検査方法について
 “1 はじめに”でも述べましたが、SUNATECで商品化している食安監発第1102004号で採用された腸管出血性大腸菌O157及びO26の検査方法を中心に紹介します。
1)LAMP法について
→ (1) 検査に要する時間が短い
培養法では、確認試験工程も含めて4〜5日間を要しますが、LAMP法では最短2日間で結果の判定が可能です。
→ (2) 検査方法の出典
  LAMP法は、厚生労働省通知「食安監発第1102004号」にも採用されている検査方法です。
→ (3) 検査対象項目の拡大
LAMP法が採用されたことにより、腸管出血性大腸菌O157とO26が同時に検査することが可能となりました。但し、培養試験に進んだ場合は、この限りではありません。
→ (4) 検査対象品目
「食安監発第1102004号」にも記載されていますが、食肉(生肉を含む。)、食肉製品及びチーズについてはLAMP法での検査対象外です。これらの検体は、培養法により検査を行います。
2)検査概要
 通知法に記載されている食品からの腸管出血性大腸菌O157及びO26の検査法を図-1に示しました(「食安監発第1102004号」より抜粋)。
→ (1) Step-1
  ノボビオシン加mEC培地を用いた増菌培養を行います。本工程は従来法と変更ありません。
→ (2) Step-2
培養後の培養液を用いて、遺伝子検出法の一つである「LAMP法」の検査手順に従い、検査を進めます(詳細は後述します)。
→ (3) Step-3
VT(Verotoxin:ベロ毒素)遺伝子に由来するDNA配列の有無を確認します。VT遺伝子陰性の場合は検査終了、陽性の場合は培養法に進み総合判定します。
なお、今回は培養試験の内容は省略させていただきます。
図-1食品からの腸管出血性大腸菌O157およびO26の検査法
3)LAMP法の検査方法
 Step-2で記載した「LAMP法」の詳細な検査内容を以下に示しました。
→ (1) ノボビオシン加mEC培地で培養した培養液を適量採取します(写真-1参照)。
→ (2) 付属のDNA抽出キットを用いて培養液から遺伝子を抽出します(写真-2参照)。
→ (3) 専用チューブに抽出した遺伝子溶液及び専用試薬を氷上で添加、混合します(写真-3参照)。
→ (4) 専用チューブをリアルタイム濁度測定装置にセットします(写真-4参照)
→ (5) VT遺伝子測定用パラメーターを設定した後、測定を開始します(写真-5-1参照)。目的とする遺伝子配列(今回はVT遺伝子由来の配列)が試料液中に含まれていた場合、増幅が認められ緩やかな曲線が得られます(写真-5-2参照)
→ (6) 増幅反応終了後、結果が自動的に判定されます(写真-6参照)。写真では、試料液-1、-4、-5及び-6は陽性、その他は陰性と判定されました。
まとめ
 LAMP法は、迅速検査法の一つで、本検査手法を用いることで検査期時間の大幅な短縮が見込まれます。但し、全ての食肉(内臓を含む。)、食肉製品、チーズについては適応範囲外であるため、試薬、キット等の向上が期待されます。
なお、検査をご依頼の際には、LAMP法での検査受託が可能か否かについて、適宜お問い合わせ頂ければ幸いです。また、今回ご紹介した厚生労働省通知「食安監発第1102004号」記載の腸管出血性大腸菌O157及びO26以外の検出用キットが発売されており、検査範囲の拡大が見込まれます。
以上
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