中国国内でも、富裕層を中心とした消費者の安全意識が向上したことを受け、国内流通食品に対する安全施策を矢継ぎ早に講じている。また、本年8月に開催される北京オリンピックでは海外から多くの選手や観光客が訪中することが確実である。そして、これらの多くの外国人が中国国内で食事をする機会が爆発的に増加する。このため国内の食品の安全対策を確立することが急務となっている。
1990年代後半に、上海などの都市部でかなり深刻な残留農薬による食中毒事件が発生した。これを受けて、国務院は2001年に「無公害食品行動計画」を策定し、農業部(農水省相当)を実施部署と定め、安全な食品の流通に努めている。そして、2004年には「食品安全工作強化規定」を発表し、農業改革、流通改革、教育と農村市場の管理監督、罰則や地方政府の責任追及等について重点的に取り組むとした。同年に農業部は農業部公告第322号として、パラチオン・メタミドホス等の高毒性有機リン農薬の三段階規制を打ち出した。これは、2004年に製剤登録を抹消し、2005年に使用を綿花・水稲・トウモロコシ・小麦に限定し、2007年1月に高毒性有機リン農薬の国内使用を全面禁止したものである。また、2006年11月には「中華人民共和国農産品質量安全法」を施行し、農産品の品質の安全、公衆の健康維持、農業・農村の経済発展に資することとした。さらに、2007年3月には日本のポジティブリストの試験法と同等の多成分一斉分析法を含む36項目の分析法を、残留農薬等の検査項目を国家標準(GB)として正式に採用した。この結果、中国国内の分析法が統一され、EU、米国、日本の検査と同等のレベルで検査できるようになった。そして、同年7月10日には、中国共産党の第十一次五カ年計画に従って、農業部・衛生部・工商総局・質検総局・食薬監督局等の合同で「国家食品薬品安全十一五規画」を策定した。これによって、食品・薬品・外食衛生等の監視作業の強化と5年後に国内食品の検査率を90%に引き上げ、重大事故には100%対処することを定めた。続いて、同月の26日には、「国務院関与加強食品等産品安全監督管理的特別規定」を公布と同時に施行した。これは従来積み上げてきた各種食品安全に係わる法規の間の漏れを埋めることを狙ったもので、法規に規定がない全ての食品安全を脅かす行為に対処しようとしたものである。 |