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茶の熱水抽出における農薬移行についての基礎的検討
財団法人 食品分析開発センターSUNATEC 藤吉智治・阿宮彩・辻内真希子・片岡洋平・菊川浩史・宮田守
目的
  ペットボトル飲料をはじめとした茶の加工食品の需要が増加しており、茶飲料に関しても安全性が求められています。これまでのところ、茶葉に残留した農薬が熱水によりどの程度抽出されるのかを示した例はほとんどありません。
  本検討は茶葉に農薬が残留していたと仮定し、農薬を添加した茶葉から浸出液への農薬移行率を求めることを目的としています。浸出液への移行率は農薬の水溶性が深く関わると考え、農薬のLogKow(オクタノール・水分配係数)に着目して検討を行いました。
  農薬を1ppm相当になるように添加した茶葉を用いて、食品衛生法に準じた方法で浸出液を調製しました。また、ろ紙上に残った茶殻を回収し、浸出液と茶殻それぞれを検体としました。
  分析方法は、塩析、ミニカラム精製を行い、濃縮後、測定機器に合わせた溶媒で定容しました。測定にはGC/MS及びLC/MS/MSを用いました。
結果・考察
  検討農薬の浸出液への移行率(表1)、及びグラフ(図1)を示しました。測定結果より、LogKowが高いほど浸出液への移行率が高く、値が低いほど移行率は低くなりました。また、茶葉に残留していたテブコナゾールも同様の挙動を示す結果となりました。
 本検討結果より、農薬のLogKowと浸出液への移行率には高い相関関係があることがわかり、実際に残留している農薬についても同様の結果を得ることができました。
 LogKowを指標とすることで、茶葉に残留する農薬が飲用するお茶にどの程度移行するのかを把握することが可能となります。また、茶葉を原料としない麦茶やハーブティーなどについても、LogKowを用いて農薬の浸出液への移行率を予測することができ、本検討結果はリスク管理の面で非常に有用なデータになると考えます。
表1.検討農薬の浸出液への移行率
図1.農薬のLogKow値と浸出液移行率の相関
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