タイ政府の統計によると、毎年人口比10万人に5〜6人が農薬による健康被害を蒙っており、果樹栽培では農薬散布が最も効果的と考える農民が70〜90%いるにも関わらず、農薬使用を減らしたいと考える農民が約75%を占めていた。さらに、農薬のラベルを理解できないと答えた農民が約50%であった。タイ政府は、農薬使用の頻度が特に高く、農薬中毒の問題が発生しているタイ北部に位置するチェンマイ大学農学部に、農薬等に関する情報及び適正な農薬使用ガイドラインを提供し、省農薬技術を促進することを目的とした農薬残留分析・病虫害診断センターを設立することにし、同センターに対する技術協力を我国に要請した。この要請に応じて、国際協力機構(JICA) は、2003年11月から3年間の技術協力プロジェクト「北部タイ省農薬適性技術計画」を開始した。
プロジェクトには、三重大学と香川大学から短期の専門家が派遣され、チェンマイ大学教員で結成された、病虫害診断チーム(病虫害の診断と適切な薬剤散布および畑の
衛生管理)、農薬分析チーム(農作物および土壌中の残留農薬の分析)、IT・技術移転チーム(低農薬技術普及のウェブページ作成とワークショップ等の実施)、また作物別にカンキツチーム、バラチーム、キャベツ類チームと一緒に活動した。 |