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加工食品の表示について
金城学院大学 薬学部 岡 尚男
 大手菓子メーカーの賞味期限改ざん、食肉加工会社の食肉偽装等、消費者の表示に関する不信を抱かせる事件が相次いで起きています。本来、食品の表示は、消費者にはもちろんのこと、監視指導する行政側にとっても、重要な情報となるものです。そこで、加工食品の表示制度について、簡単に説明します。
 近年、多種多様化する加工食品において、様々な問題が発生していることを受け、品質表示基準の見直しが行われ、移行期間を経て平成18年10月1日から全面適用になりました。
食品表示制度に関しては、次のようないくつかの法律が関係しています。

食品衛生法(厚生労働省)

農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律「JAS法」(農林水産省)
不当景品類及び不当表示防止法「景表法」(総務省 公正取引委員会)

健康増進法(厚生労働省)

計量法(経済産業省)

この他にも、公正競争規約、自治体の条例等が関係しています。従って、ひとつの表示にも様々な法律が関係してくる場合があります。

表示対象
 加工食品については、容器包装に入れられ、販売される食品、添加物、試供品が表示義務の対象となりますが、客の求めに応じて、その場で容器に詰めて販売する対面販売や外食産業で提供される食品は対象外です。ただし、スーパー等のバックヤードで製造されたそうざいや店舗の調理場で製造され、セルフで販売されるサンドイッチ等については、食品衛生法に基づく表示が必要とされますが、JAS法においては、その場での製造販売では表示の必要はありません。
表示方法
 
 主な表示項目は、名称、原材料名、原料原産地表示、添加物の表示、内容量、期限表示、保存方法、製造者・販売者等、アレルギー表示、遺伝子組換え食品の表示、栄養表示、有機食品の表示、特定保健食品・栄養機能食品・特別用途食品等です。
 また、表示に関して次のような原則があります。
基準に合う表示のない食品等を、販売したり、販売のために陳列したり、また営業上使用することはできません(このことは、製造者のみならず販売者等にも適用されます)。
表示は邦文で、理解しやすい用語で正確に行います。また、包装を開かないでも容易に見られるように行うことが必要です(使用する活字の大きさは、原則として8ポイント以上とします。)。
虚偽あるいは誇大な表示等は行わないこと。

項目ごとでは次のようになります。

(1) 表示様式
 

JAS法では、所定の様式に従って一括して表示することが基本ですが、平成18年の改正で『わかりやすい表示』となるよう見直され、プライスラベルによる表示等も可能です。名称と内容量は商品の主要面に記載することで一括表示様式の記載を省略できます。
また、容器包装の見やすい箇所に、文字や枠の色は背景の色と対照的な色で、横書き又は縦書きとし、記載が困難であれば枠を省略できます。

(2) 原材料名
 

弁当については、外見から判断できるおかずは『おかず』とまとめて記載できます。ただし、おかず類に含まれるアレルギー物質や食品添加物は表示が必要です。複合原材料名の原材料が3種類以上ある場合、重量順では3位以下で、当該原材料に占める重量の割合が5%未満のものは『その他』と記載できます。

(3) 原料原産地
 

どの原材料がどこを原産地とするのかが明確となるよう表示する必要があります。従って、輸入された加工食品には原産国名が、また、一部の加工食品には使用された原材料の原産地名の表示が義務づけられています。

(4) 食品添加物の表示
 

食品添加物として認められている指定添加物、既存添加物、天然香料、一般飲食物添加物が使用できますが、すべて表示が義務づけられています。栄養強化剤、加工助剤、キャリーオーバーの表示は不要です。

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栄養強化剤

 栄養強化の目的で使用されるビタミン類、ミネラル類、アミノ酸類については、表示が免除されていますが、同じ物質でも、栄養強化の目的以外で添加物として使用する場合は、表示する必要があります。
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加工助剤

 食品の加工の際に添加されるもので次の3つに該当する場合は、表示が免除されます。

食品の完成前に除去されるもの

最終的に食品に通常含まれる成分と同じになり、かつ、その成分量を増加させるものではないもの

最終的に食品中にごくわずかな量しか存在せず、その食品に影響を及ぼさないもの

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キャリーオーバー

 原則として、食品の原材料に使用された添加物についても表示する必要があります。
ただし、食品の原材料の製造又は加工の過程で使用され、その食品の製造過程では使用されないもので、最終食品に効果を発揮することができる量より明らかに少ない場合は、表示が免除されます。 しかし、添加物を含む原材料が原型のまま存在する場合や、着色料、甘味料等のように、添加物の効果が視覚、味覚等の五感に感知できる場合は、キャリーオーバーにはなりません。

筆者略歴
岡 尚男(おか ひさお)
【勤務先・職】 金城学院大学薬学部 教授
【最終学歴】 名城大学薬学部(1970年)
【学位】 薬学博士(1986年)
【職歴】 愛知県豊橋保健所(1970年)
愛知県衛生研究所(1972-2005年)
【留学】 米国国立衛生研究所(NIH、1988-89年、一年間)
【受賞歴】 昭和62年度日本薬学会東海支部学術奨励賞(テトラサイクリン系抗生物質の化学的
分析法に関する研究)
平成9年度年度日本食品衛生学会奨励賞(逆相クロマトグラフィー及び質量分析法
の食品分析への応用)
【主な研究領域】 汎用抗生物質の化学的分析法の検討
向流クロマトグラフィーに関する研究
衛生化学分野におけるLC/MSの応用研究
【主な著書】 Current Issues in Regulatory Chemistry 共著 2000 AOAC INTERNATIONAL
Encyclopedia of Separation Science Vol.5(?) 共著 2000.5 Academic Press
日本薬学会編 衛生試験法・注解 2005 共著 2005.3金原出版 
第十五改正日本薬局方解説書 共著 2006 廣川書店
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