財団法人 食品分析開発センター SUNATEC
HOME >食中毒の発生を防ごう
食中毒の発生を防ごう
社団法人 日本乳業協会   常任理事    森田邦雄
 暑かった夏もようやく終わり、秋の気配が感じられる時期となりました。
  食品に関する最近の話題というと、ミートホープ社の牛肉と称して豚肉や鶏肉を混ぜるという偽装の問題もありましたが、これは、詐欺であり食品の話題というより犯罪と捉えられるべきものです。
 ペコちゃんの株式会社不二家や白い恋人の石屋製菓株式会社が、人の健康被害がないのにかかわらず、非常に大きくマスコミに取り上げられ、企業として大きなダメージを受けました。
 賞味期限を改ざんした事が大きく報道され、本来食品衛生上の問題である、アイスクリームの大腸菌群陽性があまり問題とされていないという、不思議な状況にあります。
食品等事業者としては、やはり、食中毒の発生を防ぐことが何よりも重要で、多くの方が日夜そのために努力をされているのです。
 にもかかわらず全国の食中毒の発生はなくなりません、最近では、ノロウイルスを原因とする食中毒が多く発生し、食中毒患者は逆に増加しております。
 厚生労働省の統計では、平成18年の食中毒患者は39,026人と前年に比べ12,007人(31%)も増えており、そのうちノロウイルスによるものが27,616人(71%)で、前年に比べ18,889人も増えております。今後、冬にむけて、西尾先生の特集をよく読み、その予防に万全を期す必要があります。
 もちろん、細菌性食中毒も依然発生しており、特に最近気になるのは、カンピロバクターを原因とする食中毒で、平成18年の患者数は2,297人と細菌性食中毒のうちで最も多く発生しており、前年まで患者数の最も多かったサルモネラ属菌(平成18年2,053人)を抜いているということです。
 カンピロバクターは牛、豚及び鶏の腸管内に生息し、これらの動物のと殺、解体時に肉や内臓が汚染され、レバーの刺身や十分熱が通っていない肉を食べることによって食中毒が起きています。今年に入っても、牛や鶏のレバーを刺身で食べたり、バーベキューで鶏肉をよく加熱せずに食べて発生しているケースがたくさん報告されており、これらの肉にはカンピロバクターの汚染があることを前提に取り扱う必要があります。
 カンピロバクターはもちろんサルモネラ属菌等の細菌性食中毒の発生を防ぐためには、その原則である、「菌をつけない、増やさない、殺す」の三つを常に念頭においておかなければなりません。
 食中毒については、「賢者は、他の人の発生原因等に学び発生を予防し、愚者は、自分が食中毒を発生させて学ぶ」といえます。だんだん涼しくなりますが、気を緩めることなく、食中毒発生の種々の事例を良く知り、自らが食中毒を起こすことのないようにしなければなりません。

筆者略歴
森田 邦雄(もりた くにお)
(社)日本乳業協会常務理事
帯広畜産大学獣医学科卒業、獣医師。(1966年)
北海道森保健所に勤務、旭川保健所、北海道衛生部食品衛生課を経る(1996年)
厚生省環境衛生局乳肉衛生課に勤務、
生活衛生局乳肉衛生課課長補佐、食品衛生課課長補佐を経る(1976年)
生活衛生局食品衛生課輸入食品企画指導官(1991年)
生活衛生局乳肉衛生課長(1994年)
厚生省(平成13年1月から厚生労働省)東京検疫所長(2000年)
厚生労働省退職(2004年3月31日)
(財)日本冷凍食品検査協会、顧問として勤務(2004年4月1日)
同年8月1日同協会常務理事
同協会退職(2006年5月18日)
(社)日本乳業協会常務理事に就任(2006年5月19日〜現在に至る)
他の記事を見る
ホームページを見る

サナテックメールマガジンへのご意見・ご感想を〈e-magazine@mac.or.jp〉までお寄せください。

Copyright (C) Food Analysis Technology Center SUNATEC. All Rights Reserved.