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においの分析について
はじめに
 人間の五感の一つに嗅覚があり、この嗅覚に関与する「におい成分」は、約40万種類以上存在すると考えられています。「におい成分」は、分子量20〜400程度の物質が多く、私たちの嗅覚は、これらの「におい成分」が多数混在した複合臭を感じています。食品において、味と共ににおいは非常に大切な役割を担っており、においの成分やそのバランスに僅かな違いがあるだけで「異臭」として感じられる事が多々あります。におい成分の分析の方法は幾つかあり、その一つにガスクロマトグラフ(GC)を用いた分析法があります。
におい成分の捕集
 におい成分の捕集には、成分や検体の特性などにより幾つか手法があります。以下に代表的な捕集の方法を示します。

(1)蒸留法や溶媒抽出法は、試料を蒸留、または溶媒抽出をすることにより試料からにおいの成分を抽出・濃縮します。しかし、その過程で成分が変化したり、においのバランスが狂ったりして、抽出物のにおいが元の試料のにおいと異なってしまう危険性があります。

(2)ヘッドスペースガス分析法は、気-固、気-液の平衡蒸気(ヘッドスペース)を捕集し分析する方法で、低沸点化合物や、他の手法では抽出されにくい成分に有効です。試料を入れた容器の上部空間に存在するガスを分析するので、実際に人間が嗅ぐにおいに近い成分組成を測定可能であると考えられます。におい成分の捕集方法によりスタティックヘッドスペース法とダイナミックヘッドスペース法に分類されます。

(3)ヘッドスペース収着抽出(head space sorptive extraction : HSSE法 )は、ポリジメチルシロキサンを固定相としてコーティングした攪拌子を、試料を入れた密閉容器に固定して成分を吸着させ、分析します。試料中の成分が抽出されると共に濃縮されるので、感度良く測定することができます。
成分の分析
 捕集したにおい成分をGCで分離し、より多くの情報を得る為に、最近では検出器として質量分析計(MS)を使う例が多く見られます。その他の検出器として、有機化合物全般を検出する水素炎イオン検出器(FID)や、特徴的なにおいをもつ含硫化合物を選択的に検出する炎光光度検出器(FPD)など、目的物の特徴により検出器を使い分けます。
官能検査
 MSなどによる分析で成分の組成は解りますが、得られるピークの大小とにおいへの寄与は必ずしも一致しません。そのため、流路をカラムの後ろの方で分割し、一方を検出器へ、もう一方をSniffing-portへ導き、クロマトグラムの取得とにおい嗅ぎを同時に行います。GCから溶出される成分のにおいを人間が嗅ぎながら分析することにより、においの質や強さに関する情報が得られます。
おわりに
 HSSE法とGCを組み合わせたにおいの分析では、人間が感じる食品のにおいに最も近いと思われる状態を分析できます。品質管理の一環として、またおいしさなど付加価値を検討するにあたり、一つの有益な手法になると考えられます。
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