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肉種鑑別について
1.はじめに
  6月下旬に食肉メーカーによる牛肉コロッケの原料偽装問題が発覚してから約1ヶ月が過ぎました。この原料偽装が行われていた実態を調べる方法として注目を浴びているのがPCR(Polymerase Chain Reaction)法を用いた遺伝子検査、すなわち肉の種類に特異的なDNAの配列(A:アデニン、G:グアニン、C:シトシン、T:チミンの並び順)の有無を確認する検査です。本検査方法は、検査技術を習得するのが比較的難しいですが、検出感度及び特異性が高いことから分子生物学、医療分野、犯罪捜査はもちろんのこと、食品分野では遺伝子組換え農作物や特定原材料物質(いわゆるアレルゲン物質)の検査/確認試験方法として一般に広く用いられています。
2.検査方法
 食肉製品及び食肉を用いた惣菜などからDNAを抽出し、抽出したDNAを鋳型としてPCRを行い、各肉種に特異的DNA配列(予定された長さのPCR産物)の有無をアガロースゲル電気泳動法により確認します。
 市販の牛肉、豚肉、鶏肉、羊肉及び馬肉についての検査結果を写真-1に示しました。
左から牛肉(273 bp)、豚肉(398 bp)、鶏肉(227 bp)、羊肉(331 bp)、馬肉(439 bp)です。
なお、bpはbase pair(塩基対)の略でPCR産物の長さを示しています。
アガロースゲル電気泳動の結果
写真-1
「アガロースゲル電気泳動の結果」
3.検査の実例
 市販の食肉製品及び食肉を用いた惣菜についての検討結果の一例を表-1に示しました。
表-1 検討試験結果
検査対象 表示内容 検査結果
サラミ × × × ×
ハム × × × ×
餃子 豚、鶏 × × ×
ミートボール × × × ×
ハンバーグ 牛、豚、鶏 × ×
牛肉コロッケ × × × ×
メンチカツ 牛、豚 × × ×
○:検出した ×:検出せず
4.まとめ
 上記のように一般的な食肉製品や食肉を用いた惣菜については、検出感度及び特異性の高い分析が可能なPCR法ですが、肉エキス、ブイヨンや化粧品などによく用いられるコラーゲン、ゼラチン、プラセンタなど動物由来の抽出物をはじめとして製造・加工工程などの影響によりPCRに適したDNAが抽出できない(存在しない)場合は、「分析不能」となる可能性があります。したがって、PCR法の特性を十分に理解した上で肉種鑑別試験をご依頼頂ければ幸いです。
以上
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