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特別講座─天然着色料の分析について(5)
薄層クロマトグラフィーによる食品中のカロテノイド系天然着色料の一斉分析
金城学院大学 薬学部 岡 尚男
1.はじめに
 天然着色料はカロテノイド系、キノン系、アントシアニン系、フラボノイド系、ポルフィリン系、ジケトン系、ベタシアニン系、アザフィロン系等に分類される。このうち、カロテノイド系は基原とする植物が身近にあるために、使用の歴史が古く、また、黄色から赤色の色合いに起因する繁用性もあって、種類、使用量共に極めて多い。5回にわたって天然着色料の薄層クロマトグラフィー(TLC)による分析法を紹介してきたが、最終の今回は繁用されている7種類(アナトー色素、オレンジ色素、クチナシ黄色素、トウガラシ色素、トマト色素、マリーゴールド色素、β-カロテン)のカロテノイド系天然着色料のTLCによる一斉分析法を紹介する。
2.TLC分離条件について
 プレートは化学結合型C18とシリカゲルの2種類を、溶媒はアセトニトリル、アセトン、エタノール、メタノール、ジエチルエーテル、石油エーテル、ベンゼン、n-ヘキサン、酢酸エチル、及び酢酸等を用いて、プレートや展開溶媒の組み合わせ、あるいは混合比等について種々検討を加えたところ、下記のTLC条件に示したように、逆相、順相共に複数のTLC 条件を見出した。
 オレンジ色素、トウガラシ色素、及びマリーゴールド色素は、多種類のエステル体を含んでいるため、そのままTLCに供するとスポットが連なり、良好に分離することができない。しかし、色素抽出液をケン化した後、C18カートリッジによる精製を行なってTLCを実施すると、それぞれの色素に単一のスポットが明瞭に観察される。これらのスポットは、それぞれの色素の主成分であるβ-クリプトキサンチン標準品、カプサンチン標準品、及びルテイン標準品とそれぞれRf 値、色調共に一致する。トマト色素はケン化することなく単一のスポットとして分離することができ、分離されたスポットはリコペン標準品とRf 値及び色調が一致する。アナトー色素の主成分であるビキシンとノルビキシン、及びクチナシ黄色素の主成分であるクロシンとクロセチンは、ケン化することなく単一の色素スポットとして検出することができる。それに、β-カロテンも同様にケン化することなく単一の色素スポットとして検出される。
Table1
 各色素スポットのRf 値はTable 1に示したが、いずれのTLC条件おいてもスポットが重なるものは認められず、一斉に分離同定できることが確認された。従って、アナトー色素はビキシン及びノルビキシンを、オレンジ色素はケン化後のβ-クリプトキサンチンを、クチナシ黄色素はクロシン及びクロセチンを、トウガラシ色素はケン化後のカプサンチンを、トマト色素はリコペンを、マリーゴールド色素はケン化後のルテインを、β-カロテンはβ-カロテンを指標成分として用い、TLC条件を適宜組み合わせて使用することにより、7種類のカロテノイド系天然着色料の同定が可能である。
→ 1)逆相TLC条件
プレート: RP-18F254S (メルク社製、Art 15389)
展開溶媒: [1] アセトニトリル−アセトン−n-ヘキサン=11:7:2
[2] アセトン−水=9:1
→ 2)順相TLC条件
プレート: シリカゲル60F254 (メルク社製、Art 5808)
展開溶媒: [3] n-ヘキサン−ジエチルエーテル−酢酸=4:1:1
[4] ベンゼン−酢酸エチル−メタノール= 15:4:1
3.食品中からのカロテノイド系色素の精製
→ 1)色素の抽出
 乳製飲料以外のジュース(50mL)及び融解させた氷菓(50g)はそのままで、その他の試料(50g)は細切した後に、乳製飲料(50mL)は試料の約3倍量のアセトンを加え、攪拌、暫時放置後、沈殿を除去し、上澄液のアセトンを留去した後に、水50〜100mLを加え、エーテル30〜50mLで色素を抽出する。そのエーテル層を分取、留去してメタノール20〜30mLに溶解し、これを色素抽出液とする。
→ 2)ケン化
 色素抽出液に5%水酸化ナトリウム−メタノール溶液2mLを加え、密栓、遮光して時々攪拌しながら室温にて24時間放置する。その後、水50〜60mLを加えメタノールの濃度を30%以下にした後、1mol/L塩酸でpH 4.5以下に調整し、あらかじめメタノール及び水各5mLで活性化したC18カートリッジに負荷する。つぎに、水10mLでカートリッジを洗浄し、n-ヘキサン20mL、アセトン5mL、及びメタノール10mLの順で色素を溶出する。また、色素が試料からエーテルには抽出されずに、水層が着色している場合には、この水層を色素抽出液として、ケン化を実施せず、直接C18カートリッジによる精製を行なう。これらの色素溶出液をそれぞれ濃縮後、試験溶液とする。
 得られた色素試験溶液のうち、ヘキサン画分にはβ-カロテン、β-クリプトキサンチン、ビキシン、及びリコペンが、アセトン画分にはカプサンチン、クロセチン、ノルビキシン、及びルテインが、メタノール画分にはクロシンが溶出された。
4.市販食品への適用
fig.1
 標準品での以上の検討から、本法は市販食品に適用が可能であることが示唆されたので、市販の73種類、294食品に本法を適用した。その代表的なTLCをFig. 1に示したが、食品から得られた色素スポットの良好な分離が確認され、さらに、Rf値及び色調は指標成分の標準品のそれとよく一致する。したがって、今回紹介した一斉分析法は、食品中の夾雑物の影響を受けることなく、確実かつ簡便にこれら7種類のカロテノイド系天然着色料の同定することが可能である。
 5回にわたって天然着色料の分析法について紹介してきたが、読者の皆様の参考になれば幸いである。なお、ご不明の点は下記のメールアドレスまでお問い合わせください。
【メールアドレス】 oka@kinjo-u.ac.jp
謝辞
 本研究は、愛知県一宮保健所 林 智子主査、愛知県衣浦東部保健所 尾関尚子主任主査、岡崎市保健所 板倉裕子主査らとの共同研究で実施されたものであり、その旨をここに記載し、謝意を表します。
文献

Tomoko Hayashi, Hisao Oka, Yuko Ito, Tomomi Goto, Naoko Ozeki, Yuko Itakura, Hiroshi Matsumoto, Yasuko Otsuji, Hiromichi Akatsuka, Takahiko Miyazawa, Hisamitsu Nagase, J. Liq. Chromatogr., 26, 819-832, 2003.

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