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7Sを柱とした食品製造現場での実践
はじめに
 食品の安全性に対する国民の意識は年々高まってきており、食品の製造現場である工場、厨房施設に関しては、非常に厳しい安全性が求められるようになってきています。 
食品製造現場での衛生管理の向上には、全従業員が一丸となってテーマごとに継続的改善活動を実施していくことが重要です。
  そこで、衛生管理の基本である7Sを中心とした改善活動に取り組まれている企業を具体例として、手順を追ってご紹介します。
手順1:トップの方針の明確化
 7S活動推進の取組みには経営トップの明確な方針、目標が必要です。
具体的には、全従業員の目指す目標を具体的な数値で明確化したうえで、工場に掲示し視覚に
訴えます。
衛生目標
衛生目標
手順2:7S推進体制の確立
 スピーディーに実効を上げる為には、経営トップを中心とした推進体制が必要です。
具体的には、経営トップを委員長とした即断即決が可能な7S活動を中心的に推進する委員会を設置します。
委員会のメンバーには各部門から代表者を選出し、職制を活用した組織体制にします。
又、各部門における7S担当者を明確にする為、誰がどこを担当するかを明確にします。
手順3:7S推進計画の立案
 7Sを効果的に推進する為には推進計画が必要です。
具体的には、下記のポイントを押え、7S推進計画を立案し、目標とともに掲示します。
(7Sは永久的に継続するものであるが、1年を区切りとした計画を立案する。)
・誰が責任を持って
・何時までに
・何処で
・何を
・どの様な方法で行なうか
を記載し、具体的に作成します。
手順4:キックオフ大会
 推進計画の実施には、全従業員の衛生向上に対する意識の共有化が必要です。
具体的には、下記内容を踏まえキックオフ大会を開催します。
(1)7S活動を開始する宣言を行います。
(2)会社と従業員にとって7S活動を実施する意義を伝えます。
(3)経営トップの方針である、「衛生目標」を発表します。
(4)7S推進体制を発表し、メンバーの紹介を行います。
キックオフ大会後、全従業員の写真入カードを作成し、この取り組みに対する決意表明として一言書き添え、休憩室に掲示します。
手順5:ガイドラインを設定する
 7S活動を推進するにあたり、その各々の項目についてガイドラインの設定が必要です。
具体的には、委員会により現場に適応したガイドラインを設定します。
整理:要る物と要らない物の判断基準を明確にし、要らない物の処分の仕方を決定します。
整頓:要る物に対し、先入れ先出しが可能な保管の仕方を決定します。
清掃、洗浄、殺菌:施設、設備、機械、器具等の清掃、洗浄、殺菌方法を決定します。
清潔:個人の清潔として、身だしなみ、手洗い、自主健康管理等の方法を決定します。
躾:整理、整頓、清掃、洗浄、殺菌を継続させる為、教育訓練スケジュールを決定します
手順6:勉強会の実施
 7S推進には、全従業員のレベルを合わせる事が必要です。
具体的には、7Sの各項目について決められたガイドラインについて勉強会を行います。  
この場で全従業員に対し、その目的と期待される効果、実際に進める手順をわかりやすく説明し、
周知徹底させることが、今後の展開に大変重要です。
従業員講習会
従業員講習会
手順7:7S活動の展開
整理
7Sでまず実施するのが、整理です。
整理とは、要る物と要らない物を区別し、要らない物を処分する事です。
製造現場には要らない物が散乱しています。ところが、毎日見慣れている人は要らない物に気付きません。又は、要らない物に対し「勿体無い」とか「情」が入ってしまい処分出来なくなっています。
この要らない物が散乱する状態において、作業場を狭くする、作業動線があまり取れなくなる等の弊害が発生し、作業効率を悪くする、労働安全衛生上も不安定で事故を起こす恐れが出てきます。
そこで、要らない物をはっきりみえる形にする為に「赤札作戦」を実施します。
「赤札作戦」とは、赤い紙に「5.ガイドラインを設定する」において決定したガイドラインを予め書いておき、製造現場内にある、原材料、仕掛品、製品、設備、治具、工具、備品等全ての物に対し、1つずつ確認を行い、不要物に対し「赤札」を貼り付け、要らない物を目に見える形にしていくことです。
従業員一人一人が管理担当するエリアマップにおいて整理を実施します。
不要と判断する物に赤札を貼り付け、不要在庫一覧表に同時に記載していきます。
製造現場に赤札が多く貼り付けられる事により、「何故、ムダな物を購入したのだろう、ムダなスペースを使用していたのだろう」とムダを見える形にする事で、現状を反省して頂きます。
一定期間各作業員が整理活動を行った後、委員会メンバーにより各工場内を巡回確認し、別の目により整理活動を実施していきます。
担当者による赤札作戦
担当者による赤札作戦
赤札が張付けられた物
赤札が張付けられた物
不要在庫一覧表
不要在庫一覧表
次に赤札を貼り付けた物(不要在庫一覧表、不要施設・設備一覧表に記載)に対し、委員会において、廃棄、別の場所で保管等決定します。
担当者による赤札作戦
活用されていない棚
担当者による赤札作戦
工場内から撤去
整頓
整頓とは、「整理」において要る物と判断された物に対し、定位置管理を行い、識別を行うことです。
定位置管理とは、定められた場所に定められた物を定められた数量保管する事です。
識別とは、置き場所に名札を設置し、誰でも置場を認識出来る状態にする事です。すなわち、作業工程から探すムダ、使いにくいムダ、戻しにくいムダを排除する事です。
清掃用具放置
清掃用具放置
未整頓の棚
未整頓の棚
吊下げ保管(明示)
      吊下げ保管(明示)
整頓(表示)され先入れ先出しルールの棚
整頓(表示)され先入れ先出しルールの棚
清掃・洗浄・殺菌
清掃とは、乾燥状態でゴミや埃が無いように掃除をする事です。
洗浄とは、湿潤状態でゴミや埃が無いように掃除をする事です。
殺菌とは、微生物を殺滅したり、除去したり、増殖させない事です。
しかし、単に掃除をする事ではなく、前段階での「整理」により作業現場から要らない物を処分、「整頓」により要る物に対し置場を決定してから効率よく掃除を行うことです。
清掃は全従業員により出来映えにバラツキがあってはなりません。
そこで、文書化されたマニュアルが必要となります。
マニュアルには、どこを、だれが、いつ、どのようにしたかの項目を含めます。
微生物検査を実施し、マニュアルに従った清掃、洗浄、殺菌の出来映えを確認します。
検査結果が良ければ、マニュアルとして確定します。
作業終了後
作業終了後
清掃終了後
清掃終了後
清潔
食品産業において、7S活動の目的は清潔です。
清潔とは、整理、整頓、清掃、洗浄、殺菌が出来ていて微生物レベルでの綺麗な状況のことを言います。
上記取り組みが確実に実施されて、初めて目標としている清潔にたどり着けることが出来ます。
躾
躾とは、整理、整頓、清掃、洗浄、殺菌、清潔における約束事やルールを守る事です。
いつ何時でも定められたルールに則り行動し、7S活動を維持発展させる要が躾です。
躾の方法として、教育訓練プログラムに準じた定期的な講習会の実施、各現場でルールを掲示し、目で見る躾を実践しています。
入室時靴洗浄槽注意
入室時靴洗浄槽注意
入室時のルール
入室時のルール
粘着ローラールール
粘着ローラールール
業者へ啓蒙
業者へ啓蒙
トイレルール
トイレルール
おわりに
これからも食品の安全性に対する国民の意識はさらに高まっていくと思われます。
7S活動を食品製造現場に定着化させ、安全で安心できる製品を消費者に提供する事により、信頼を勝ち取る事が出来るのです。
より清潔な食品製造現場を目指す為に、整理、整頓、清掃、洗浄、殺菌、躾において、PDCAサイクルを回しながら、7S活動を継続させることが必要です。食品製造現場における7S活動に終着点はありません。
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