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新年を迎えて
(社)日本乳業協会 常務理事 森田邦雄
 新年明けましておめでとうございます。私自身63回目の新年を迎えましたが、毎年毎年新たな気持ちで今年の目標を定め、その目標に向かって進もうと思います。
 昨年は、食品衛生に関する大きな事故は無く、ポジティブリスト制度もいくつかの予想外の事例がありましたが、順調に定着していきそうで何よりの一年でした。本年も何事も起こらないことを祈っております。
 食品の安全性に係わる仕事をして40年になりました。この歳になりますと食品衛生に係わる人の育成について気になり、その様な仕事に係わっていきたいと思っております。
 食品製造等関係者は食品衛生に関する基礎知識を持っていなければならないのは当然ですが、それでも事故は起きます。人間は必ず失敗するように出来ています。マーフィーの法則では「失敗する可能性があるものは、誰かが必ず失敗する。」としています。
 多くの方は、食品の安全性確保や試験の精度管理に当って関係する知識に基づき万全を期していますが、それでもヒューマンエラー(失敗)は起きます。
 ヒューマンエラーについて考えますと、まず、ハインリッヒの法則では、「1件の重大事故が発生する背景には、29件の軽い事故があり、更に300件のヒヤリ、ハットがある。」としております。これは労働災害に関するものですが、現在では、多くに事故について当てはめられており、食品の安全性確保や試験の精度管理についても当てはめることが出来ます。
 更に、治安関係者の間でいわれている破れ窓理論では、「学校等の窓ガラスが割られた場合、そのままにしておくと、窓は割っても罪にはならないと思い、次々と窓が割られる。したがって、窓を割った人には法に基づき厳正に対処するとともに、窓を直ちに修理する。すなわち、軽犯罪の取締りをおろそかにすると、重大な犯罪を助長する。」というもので、これは、1994年ニューヨークのジュリアーニ市長が実際に採用し、重大犯罪を減らす効果を挙げたといわれております。これらから考えられることは、食品の安全性確保や試験の精度管理に当っても、300件のヒヤリ、ハットについて単に見過ごすことなく、適切に対処することが、重大な事故を防ぐ上で重要であるということになります。
 一方、ヒューマンエラーは必ず起きるものとした上で、大切なことはヒューマンエラーを、その被害の小さいうちに上司が察知し、自己の施設内での被害に食い止め、お客さんには迷惑を掛けないということです。その為には、常に、報告、連絡、相談いわゆる「ほうれんそう」の習慣を職員全員が共有する必要があります。また、エラーに関して人事上の対応として、エラーを起こした場合、その人の人事評価は減点とするが、直ちに上司に報告し被害を最小限に食い止めた場合は減点を取り消すというような、「ほうれんそう」の行いやすい組織にしていくことも大切なことです。
 「賢者は他の人の経験に学び、愚者は自分で経験して学ぶ」
 新年に当り、全国で食品の安全性に係わる事故、試験のミスが起きないことを祈り、思いつくままを書いてみました。
 今年も皆様にとってより良き年となりますことを心からお祈り申し上げます。
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