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消費者に信頼されるために
実践女子大学 生活科学部食品衛生学教室 教授 西島 基弘
 あけましておめでとうございます。
 今年も穏やかで、皆様が良い年になるように!
 食品の安全と安心に関しては今年も大きなテーマの一つになるのではないでしょうか。
 昨年も消費者の食品に対する不安は払拭できず、年末には必ずしも食品が関与していないもののノロウイルスなどによりますます食品に対する不安が増長された感があります。食に関連する人達は、消費者が不安に思う内容が微生物や化学物質にかかわらず、消費者に正しい情報を伝えることが、強いては風評被害を防ぐことにも繋がることになるのではないでしょうか。「消費者が安全な食べ物を安心して食べられるように」と言うことは当たり前の話ですが、実際には難しいテーマです。消費者に食品の安全性は確保されていると声高に話をしても不安は払拭されません。
 消費者に対して最も必要なことは、食品衛生法の違反をしないということです。食品衛生法違反をすると、違反内容が報道されます。マスコミはどうしても報道内容が消費者に興味を持ってもらおうと大胆に、かつ簡潔に報道します。
 食品の安全性を確保するために、最も重要なことは食品メーカー、その製品を取り扱う流通、販売に関与する全ての人が、責任を持って安全性を守るために連携することが必要と思います。そのいずれかの意識が欠落すると取り返しのつかないことになりかねません。
 昨年度の企業の責任で発生した食品添加物や残留農薬等の食品衛生法の違反は内容をみると、仮にそれを摂取しても危害を心配しなければならない内容は滅多にありません。しかし、消費者は食品衛生法の違反が報道されると、その食品の中に毒物でも混入したのではないかと思われるような反応を示します。
 しかし、危害を及ぼさないから、それで良いというわけにはいきません。違反を起こした企業のみならず、業界全体の信用に関わります。
 食品の流通業に関しても同じです。その流通における温度管理によって、食品の鮮度だけではなく、味、臭いなど様々なものが変化します。保存の仕方によっては食中毒の原因にもなりかねません。その他、衛生害虫と言われるゴキブリやハエ、ネズミなどの進入による異物混入など、様々な課題があります。
  販売店においても食品の安全性確保は極めて重要な役割を担っています。店頭に並んだ商品の取り扱いによっては品質の劣化により食味の変化、色、味の変化や食中毒原因にもなる場合があります。店頭での管理が適切でないために混入する動物性異物も後を絶ちません。
 行政は安全性を確保するための手伝いをするところであり、食の安全性確保のためには決して主人公ではありません。いくら行政が頑張って法律を作り、監視をして、市販品について収去検査をしても、それだけでは真の安全性は確保できません。やはり生産から販売、消費に至る社長等の責任者が社員全体に対し「安全性は絶対確保する」、という強いメッセージが必要です。それがないと、どこかに気のゆるみや手抜きが出てしまいます。
 食品添加物や残留農薬であっても、食品衛生法違反の量が検出された場合、その量から健康被害とはかけ離れた内容であってもテレビや新聞で報道されると、行政措置以上に社会的なペナルティーがかけられます。対応の仕方によっては屋台骨を揺るがしかねません。食品関連のメーカーは安全な食品を消費者に提供するためには、少なくとも自社の製品について責任を持ってチエックすることも一つの方法です。
 その原因の一つとして加工食品に意味のない「無添加食品」の表示。
あまりにも近視眼的な表示をすると、自社の信用をなくすばかりでなく、業界全体の信用をなくすことにもなりかねません。食品添加物の無添加表示、他のものが天然物なのに、自社の製品のみが「天然」であるかのごとくの表示も「無添加表示」と同じように、そのうちに消費者から信頼されなくなる可能性が大きいと思っています。
  消費者の不安を払拭するためにも、いたずらに刹那的な表示は控えたいものです。
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