今回のポジティブリスト制度施行に伴い日本国内の残留農薬、動物用医薬品を検査するところでは相当分析機器の整備を行っている。私が所属している生協の事業連合体(地域購買生協が物流部門を共同運用)や大きい生協では従来からのGC/MSに加えてLC/MSを購入し稼動しているところが多い。全国レベルでの情報の共有化が進むと非常に大きな且つ有効な情報源となるだろう。農薬の検査対象が食品全体に広がったせいもあるが、色々なところがGC/MS、LC/MSなどを購入するようになった。4,5年前には考えられない状況である。
その頃にはLC/MS/MSは数千万円したが、販売台数も増え機器の進歩もあり同等の性能で半値くらいで購入できる時代となった。半値と言っても家が建つくらいの値段であるから庶民感覚から見れば破格である。機器は値切って買ったから良かったではすまない。維持管理費として毎年保守点検費用がボディーブローのように効いてくる。LC/MS/MSだと色々で3000万円近くする場合もあり、他の分析機器が1台買えるくらいの値段であるが、壊れたときのリスクを考えると契約せざるを得ない。こんな機器が 3,4台あったらもうそれだけで一千万である。検査は何もしなくても金がかかる。更に高額機器になればなるほど、扱う人の技量が要求される。機器展などで横にかわいい女性が立っていれば分析結果が出てくるものではない。農薬の残留分析で言えば、抽出部分、精製部分、定量部分から成り立っているが、最後の定量部分に分析機器は関与しているだけである。よしんば分析結果がアウトプットされても今はそれからの解析に時間と技量、経験がいる時代である。