財団法人 食品分析開発センター SUNATEC
HOME >コラム
2007年は残留農薬分析にとって良い年になるか
東海コープ事業連合商品安全検査 センター長 斎藤 勲
 2006年5月29日は残留農薬のポジティブリスト制度施行の日として、長く関係者の間では記憶に残るであろう。施行後は、皆が心配した割には冷静に推移しており、検疫所における輸入食品検査などではポジティブ前と比べると2.5倍くらいに違反件数が増えてはいるが、輸入業者の学習効果もあり来年は徐々に落ち着いてくるのではないだろうか。
機器名:3200QTrap LC/MS/MSシステム 今回のポジティブリスト制度施行に伴い日本国内の残留農薬、動物用医薬品を検査するところでは相当分析機器の整備を行っている。私が所属している生協の事業連合体(地域購買生協が物流部門を共同運用)や大きい生協では従来からのGC/MSに加えてLC/MSを購入し稼動しているところが多い。全国レベルでの情報の共有化が進むと非常に大きな且つ有効な情報源となるだろう。農薬の検査対象が食品全体に広がったせいもあるが、色々なところがGC/MS、LC/MSなどを購入するようになった。4,5年前には考えられない状況である。
 その頃にはLC/MS/MSは数千万円したが、販売台数も増え機器の進歩もあり同等の性能で半値くらいで購入できる時代となった。半値と言っても家が建つくらいの値段であるから庶民感覚から見れば破格である。機器は値切って買ったから良かったではすまない。維持管理費として毎年保守点検費用がボディーブローのように効いてくる。LC/MS/MSだと色々で3000万円近くする場合もあり、他の分析機器が1台買えるくらいの値段であるが、壊れたときのリスクを考えると契約せざるを得ない。こんな機器が 3,4台あったらもうそれだけで一千万である。検査は何もしなくても金がかかる。更に高額機器になればなるほど、扱う人の技量が要求される。機器展などで横にかわいい女性が立っていれば分析結果が出てくるものではない。農薬の残留分析で言えば、抽出部分、精製部分、定量部分から成り立っているが、最後の定量部分に分析機器は関与しているだけである。よしんば分析結果がアウトプットされても今はそれからの解析に時間と技量、経験がいる時代である。
 新しく検査を担当する人は、はじめは何も分からないから、言われたように標準作業書、手順書に従って検査を習い始める、あちこちつまずきながら。つまずかないと今何を自分がやっているのか分からないから、つまずくことは良いことである。ただし程度の問題はあるし、基本的には検査業務は日常的な気配りと好奇心がとても必要である。そうして少しずつ全体の部分が理解できるようになってくると、それぞれの検査工程の意味も分かってくる。特に検査法は色々な検討の末、採用されている部分も多いので、その道のりを文献なり、先輩なり、外部の講習会などで知識を習得すると自分の仕事の幅が出てくる。おかしい点、改良点が出てくればデータをとって改善していけば良いのである。
 今残留農薬検査は、食品衛生法に基づく検疫所や都道府県での検査、検疫所で違反となり命令検査に移行した輸入食品を検査する登録検査機関、依頼により種々の検査を行う検査機関、自社で扱うものを検査する検査部門、JA等生産段階、出荷前検査を行い残留の有無を検査している部門など、色々な部署での残留農薬検査が行われている。それはそれでいいことであり、全体としては消費者の農薬に対する漠然として不安を解消するひとつの手立てにはなっている。
 しかし、検査は先にも述べたようにお金のかかるものである。2005年のようなポジティブリスト制度元年のように、分からないから取り合えず検査してみてと言う状況ならいざ知らず、これからは雰囲気ではなく実利的な部分での検査だけが残っていく。輸入食品又は市場に流通している商品が基準にあっているかを調べる食品衛生法に基づく検査と、生産したものが適正に栽培管理されているかを検証する検査がある。前者は輸入する量、流通している数量に応じて検査件数は決められ、検査項目も特に輸入食品は600弱の農薬の中でかなりの数を網羅した一斉分析が求められる。それに対して後者は、栽培管理に応じた適切な検査項目(使用農薬とドリフトなど近隣使用農薬)での検査と検査結果の有効活用が求められる。違反はありませんでした、あそうですか、では検査は絶対続かない。依頼検査の場合、需要と供給のバランスが崩れると、必ずダイオキシンの検査のように、やっても儲からないところが多くなる状況となり結果として体力勝負で大手だけが残っていく。
 リトマス試験紙で簡単に判定できるような試験ならいざ知らず、苦労しながら出している検査結果である。その苦労をひとつの数字の中にどう表現していくことが出来るのか、その数字にどう付加価値をつけていくことが出来るのか、検査担当者一人一人が日常検査の中で模索しつつ特徴を出していかねばならない厳しい状況がもう始まっている。
Copyright (C) Food Analysis Technology Center SUNATEC. All Rights Reserved.