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大量注入GC/MSを用いたポジティブリスト制対応への検討(第2報)
財団法人 食品分析開発センターSUNATEC 小林尚・清水真理・辻内真希子・川瀬徹・菊川浩史・宮田守
目的
 ポジティブリスト制度の施行により、検査対象農薬が増加し、より迅速・高精度な一斉分析法が要求されています。しかし、多種多様な夾雑成分を持つ食品の中から農薬成分を抽出するためには、多くの精製工程が必要であるため、迅速な検査を行うための大きな障害となっています。
特に「茶」においては多くの夾雑成分を持つとともに、農薬品目ごとに「溶媒抽出(茶葉そのものを溶媒抽出)」もしくは「熱水抽出(茶葉を熱水で浸出させた液を抽出)」のいずれかが規定されているため、検査迅速化の妨げとなっています。
 本研究では、「大量注入GC/MSを用いて茶の迅速分析法」を検討し、いくつかの知見が得られたので報告させて頂きます。
方法
 溶媒抽出法は、夾雑成分の影響を軽減させるため、水を添加せず、アセトニトリルのみで抽出する方法を用いました。
  熱水抽出法は、通例、大容量、高濃縮な試験を強いられるため、少量の浸出液から抽出し、大量注入することで感度を得る方法を用いました。
 測定対象農薬は現在、茶に基準値を持ち、GCで分析可能と考えられる137農薬(溶媒抽出:84農薬,熱水抽出:53農薬)とし、添加濃度は0.1ppmとしました。
→
本検討の抽出条件
溶媒抽出法  
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本検討の測定条件 ※1
GC/MS:GPC-GC/MS-QP2010((株)島津製作所)
Column1:InertCap5(30m,0.25mm,0.25mm)
Column2:Rtx-200(30m,0.25mm,0.25mm)
カラム温度:82℃(5min)→8℃/min→300℃(27.75min)測定モード:SCAN (m/z 69〜430)
結果及び考察
図1. 各溶媒抽出法でのトータルイオンクロマトグラム
(上:厚労省一斉試験法 ※2,下:本検討法)
 溶媒抽出法では、水を添加しないことで、抽出される夾雑成分が減少し、精製カラムの精製効率・消費量が改善され、より低コストな分析が可能でした(図1)。また、添加回収試験において分析可能な農薬は67農薬でした。 熱水抽出法では、浸出液の一部を分取することで、少容量での検査が行えるため、非常に簡易な抽出操作を行うことが可能で、添加回収試験において分析可能な農薬は全53農薬と、非常に良好な結果が得られました。
  このような方法を用いることで、検査が煩雑な「茶」において、抽出操作の作業効率が改善され、多くの農薬を迅速に、低コストで精度良く測定することが可能といった知見を得ることが出来ました。
参考文献

※1 小林ら 第91回食品衛生学会学術講演会
※2 厚生労働省; http://www.mhlw.go.jp/topics/ bukyoku/iyaku/syoku-anzen/zanryu3/dl/060728-1.pdf

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