財団法人 食品分析開発センター SUNATEC
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SUNATECにおける受託内容の現状
カスタマーサービス室
本年5月にポジティブリスト制度が施行され、6ヶ月が経過しようとしています。今回はこの6ヶ月を振り返り、ポジティブリスト施行が与えた影響、お客様からのお問い合わせ、ご依頼の変化をご紹介します。
制度施行が与えた影響
ポジティブリスト施行以降、輸入食品に関しては検疫所によるモニタリング検査項目の拡大と合間って、7月以降違反が急増しました。その内訳は添付の表1のとおりですが、11条の3項のいわゆる一律基準を含めた想定外の農薬の残留による違反事例はポジティブリスト関連項目の中でも6月を除きいずれも50%を下回っており、施行以前に心配されていたドリフトなどの予期せぬ残留の違反事例は想像よりは多くないといえます。また違反を判断する根拠となった検査を見ると(表2)、検疫所によるモニタリング検査が10月の単品種の命令検査の違反増加の要因を除けば50%前後を推移しており、モニタリング検査の項目数と検体数を考慮すると比較的低い比率となっています。ポジティブリスト施行を背景に農薬の使用や管理が強化され、一定の管理条件などが整えば農薬の残留のリスクや想定外の農薬の残留は低いといえるのではないでしょうか。また、国内においては農水省や各種農業団体による農薬の散布方法や使用時期の適正化やGAPなどの導入の推進で大きな違反事例は現在まで起こっておりませんが、監視検査体制の強化により、かぼちゃのヘプタクロルの問題や生物濃縮が疑われるシジミのチオベンカルブの問題など潜在的な残留については顕在化してきています。いずれの事案も検査による汚染状況の確認や是正に向けての対応が適切であった為、大きな問題には至っていない状況です。
お問い合わせ・ご依頼内容の変化

施行日前後は、ポジティブリスト制度に合致した799項目の検査要望などのお客様に於ける制度への対応の難しさから検査機関の検査による制度対応へのお問い合わせも多い状況でした。最近では、行政等による制度への積極的な広報・認知活動などが奏効し、制度自体への認識が深まるとともに検査目的を明確にしたお問い合わせやご依頼が多くなってきました。検査の目的としては、施行前は「残留のリスク調査」が最も多く、その結果検査のご依頼も最大項目を選択される事が多い状況でした。しかし、施行以降は、「輸入時の違反リスク回避」「生産地域で使用の農薬や使用履歴農薬の残留調査」「使用履歴農薬の管理」などの目的が多く、検査のご依頼も検疫所のモニタリング項目を対象とした「SUNATECモニタリング2006」、一斉分析対象項目を組み合わせた「SUNATECカスタマイズ」、目的別の残留リスクを150項目セレクトした商品群へと変化してきています。基準が明確に定められた影響からか基準値(一律以外)の全てを検査したいという問い合わせも多いのですがかなり高額な検査料金となるため、最終的に基準全ての項目をご依頼頂くようなことはありません。基準値と実際の農薬使用履歴、検査費用から先に紹介した「カスタマイズ」と個別分析を組み合わせた検査に集約しつつあります。当面この手法が主流となるのではないと考えております。

検査機関として

残留農薬一斉分析を受託する検査機関、また登録検査機関としてより良い検査サービスを目指す中、その検査自体の精度向上と共に、ご依頼時又はご相談時における情報提供の精度向上、より安価で、利用しやすい残留農薬等の検査を提案するシステムの構築等、弊財団の努力すべき事項は多々あると思います。そのような中、弊財団では検査経験者をお客様窓口に配しお客様とのコミュニケーションを取ることにより「検査」全体の精度向上へと繋げております。このような試みが少しでもお役に立てばと考えております。

主な原因となる2枚貝について

ポジティブリスト制度は検査を強制する制度ではありませんし、また農薬等の検査も全ての製品の安全性を担保するものではありません。したがって検査機関として検査結果の持つ意味や検査の限界の情報とお客様が入手されている農薬使用履歴等のトレーサビリティー情報が組み合わせることによって、ポジティブリスト制度に対する安全性の担保が可能となるものと考えます。お客様と検査機関がこれまでのような検査結果の授受のみのではなく、良きパートナーとなることがポジティブリスト制度への対応をより的確なものとする第一歩であると考えます。
弊財団カスタマーサービス室はこのようなお客様とパートナシップを構築する良き窓口となることを目指して日々邁進しているところであります。

表1(食品衛生法ポジティブリスト関連11条違反月別推移)
11条1項違反 11条3項違反 1項3項同時違反 合計 3項の比率
6 9 11   20 55%
7 54 13   67 19%
8 37 14   51 27%
9 42 13 1 56 23%
10 44 34   78 44%
※厚生労働省輸入食品監視業務ホームページより集計
表2(食品衛生法ポジティブリスト関連11条違反判明検査の月別推移)
モニタリング検査 命令検査 自主検査 命令・モニタリング 合計 モニタリング検査比率
6 11 2 7   20 55%
7 50 14 3   67 75%
8 31 15 5   51 61%
9 23 26 2 5 56 41%
10 22 52 0 4 78 28%
※厚生労働省輸入食品監視業務ホームページより集計
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