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抗酸化物質について

 食生活が豊かになり、高血圧や肥満、糖尿病などの生活習慣病が増加している昨今、抗酸化物質への関心は高まりつつあり、それに関連した食品やサプリメントをよく目にするようになりました。抗酸化物質は、たんぱく質、糖質、脂質、ビタミン、ミネラル、食物繊維に加えて、第7の栄養素とも言われ、注目されております。また、一般に抗酸化物質は、活性酸素を消去する物質として認識されております。体内に取り込まれた酸素の約1%程度は活性酸素となり細菌などから身体を防御するために使用されますが、過剰となった活性酸素は、SOD等の体内消去システムや食品中の抗酸化物質によって消去され、健康が維持されています。しかしながら、ストレス、紫外線、環境物質、排気ガス、偏食、喫煙など様々な要因によって人体は日々ダメージを受けており、活性酸素が過剰に産生され、そのままダメージを受け続ければガン、糖尿病、高脂血症、肝臓機能の低下などなどの生活習慣病や心臓病などが引き起こされるかもしれません。
 これらを予防するためには野菜や果物等、ビタミンE等の抗酸化物質を含む食品を摂取することが重要となりますが、その食品にどの程度の抗酸化能力があるのか分からない場合が殆どです。そこで、その抗酸化能力がどんな食品にどれだけ含まれているのかを測定する方法の1つで、近年、アメリカを中心に話題に上っている測定法、それが今回紹介するORACです。

ORAC

 ORAC(活性酸素吸収能力)とは、Oxygen Radical Absorbance Capacityの頭文字を取ったものであり、1992年に米国のNational Institute on Aging(国立老化研究所)において、Guohua Caoらによって開発され、その後、Caoらと供に、米国農務省(USDA)のグループが改良に携わりました。ORACは、食品などに含まれる種々の抗酸化物質(カテキン、フラボノイド、ビタミンEなど)の抗酸化能力を分析する方法であります。また、親水性、親油性の抗酸化能力を分別定量でき、食品やサプリメントの抗酸化能力を科学的に分析する基準として、アメリカを中心に世界的に用いられるようになっています。さらに、米国では、ORAC値を表記した食品が多く販売されており、消費者にその食品がどのくらいの抗酸化力があるかを具体的な数値で表しています。健康志向が高まる現代においては、消費者が従来の栄養表示だけでなく、抗酸化力に関する情報を入手できることは、商品選択時に非常に有用であり、また、商品の供給側の立場においても商品のアピールポイントとなるため、アメリカだけでなく、今後、日本においても、普及していくのではないかと推測されます。

原理・測定法
 ORACは水素原子移動メカニズムを原理とし、連鎖切断型の抗酸化剤の活性を直接測定します。その特長は検体の阻害時間と阻害度合いを評価する方法であり、検体、又はTrolox(スタンダード)に蛍光プローブを添加し、さらにラジカル活性剤を加えた際の蛍光の減少(曲線下面積)より、ブランクの蛍光減少(曲線下面積)を引き、ORAC値が算出されます。算出されたORAC値は特定の抗酸化物質量を示すのではなく、抗酸化力の強さをビタミンE様物質(Trolox)の量(マイクロモル当量)に換算して示されます。
次号では、親水性・新油性の分別定量法など詳しい分析方法や今後の課題などに関して紹介していきます。
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