財団法人 食品分析開発センター SUNATEC
HOME >ノロウイルスについて
ノロウイルスについて
はじめに
 平成15年の食中毒発生状況(厚生労働省発表)をみると、ノロウイルスによる食中毒は、事件数では、総事件数1,585件のうち278件(17.5%)、患者数では総患者数29,355名のうち10,603名(36.1%)となっています。病因物質別にみると、カンピロバクター・ジェジュニ/コリ(491件)、サルモネラ属菌(350件)に次いで発生件数が多く、患者数では第1位となっています。
 ノロウイルスは胃腸炎を引き起こすことが知られており、特に冬場の2枚貝(主にカキ)が原因として感染する事例が多く見受けられます。最近では食品からの感染以外に、食品を介しての人から人への集団感染が発生する事例も多く報告されています。
ノロウイルスとは
 1968年にアメリカ合衆国オハイオ州ノーウォークという町の小学校で集団発生した急性胃腸炎の患者のふん便からウイルスが検出され、発見された土地の名前よりノーウォークウイルスと呼ばれました。その後、形態が明らかにされ、小さく球形をしていたことから「小型球形ウイルス」の一種と考えられました。その後、非細菌性急性胃腸炎の患者からノーウォークウイルスに似たウイルスが次々と発見され、一時的にノーウォークウイルスあるいはノーウォーク様ウイルス、あるいはこれらを総称して「小型球形ウイルス(SRSV)」と呼ばれました。
 近年になり、ウイルスの遺伝子が詳しく調べられると、非細菌性急性胃腸炎をおこす「小型球形ウイルス」には2種類あり、そのほとんどは、いままでノーウォーク様ウイルスと呼ばれていたウイルスであることが判明し、2002年8月、国際ウイルス学会で正式に「ノロウイルス」と命名されました。
 ノロウイルスは、内部にプラス1本鎖RNA(約7.5kb)を遺伝子として持っています。ノロウイルスには多くの遺伝子の型があること、また、培養した細胞及び実験動物でウイルスを増やすことができないことから、ウイルスを分離して特定する事が困難です。特に食品中に含まれるウイルスを検出することが難しく、食中毒の原因究明や感染経路の特定を難しいものとしています。
検査法<RT-PCR法:Reverse Transcription-Polymerase Chain Reaction法>
(平成15年11月5日食安監発第1105001号(別添)「ノロウイルスの検査法」)
 ノロウイルスはプラス1本鎖のRNAを持っています。ノロウイルスの持つRNAを逆転写酵素を用いてcDNAを合成し、PCR反応により目的のDNA領域を増幅して検出する方法です。
検査法
検査法
検査法
検査法
※「RT-PCR法」のほかに「リアルタイムPCR法」も良く用いられており、リアルタイムPCR法ではDNAの増幅と定量及びハイブリダイゼーションを同時に行ないます。
電気泳動
電気泳動
サーマルサイクラー
サーマルサイクラー
ノロウイルスに感染症状
 ノロウイルスはヒトに経口感染して、伝染性の消化器感染症を起こします。
 潜伏期間(感染から発症までの時間)は24〜48時間で、主症状は吐き気、嘔吐、下痢、腹痛で、微熱を伴うこともあります。通常、これら症状が1〜2日続いた後、治癒し、後遺症もありません。また、感染しても発症しない場合や軽い風邪のような症状の場合もあります。死に至る重篤な例はまれであるが、治療法は確立されていない。
主な原因となる2枚貝について
  ノロウイルスによる食中毒の原因食品として生カキ等の二枚貝あるいは、これらを使用した食品や献立にこれらを含む食事が大半を占めています。カキなどの二枚貝はプランクトンを大量の海水と一緒に取り込み、ろ過します。海水中のウイルスも同様に取り込まれ内臓特に中腸腺と呼ばれる黒褐色部分でウイルスの濃縮(蓄積)が行われます。われわれが二枚貝を生で食べるのは主に冬場のカキに限られます。このため、冬季にこのウイルスによるカキの食中毒の発生が多いと考えられます。
 また、カキを殻から出す時あるいは洗う時には、まな板等の調理器具を汚染することがあるので、専用の調理器具を用意するか、カキの処理に使用したまな板等は、よく水洗あるいは熱湯消毒等を行った後、他の食材の調理に使用することなどにより、他の食材への二次汚染を防止することが重要です。さらに、カキを調理したあとは手指もよく洗浄、消毒してください。
予防法
  ノロウイルスの主たる感染経路は、カキなどの貝類(食中毒)と、糞便や嘔吐物からヒトの手指などを経て口から入るもの(感染者からの伝染)であるため、特に飲食物を扱う人が十分に注意を払うことが、効果的な感染予防になる。
 特に調理者が十分に手洗いすること、そして調理器具を衛生的に保つことが重要です。ノロウイルスは逆性石けんや消毒用エタノールには抵抗性が強いが、手洗いによって機械的に洗い流すことで感染予防が出来ます。
 また、ノロウイルスは加熱によって感染性を失うため、中心部まで充分加熱することが食中毒予防に重要です。例えば生のカキを扱った包丁やまな板、食器などを、そのまま生野菜など生食するものに用いないよう、調理器具をよく洗浄・消毒することも必要です。
 感染者の糞便や嘔吐物を処理する場合は、手袋を使用し直接手で触れないよう注意し、作業後は手をよく洗うよう心掛けましょう。
※厚生労働省HPより抜粋
他の記事を見る
ホームページを見る

サナテックメールマガジンへのご意見・ご感想を〈e-magazine@mac.or.jp〉までお寄せください。

Copyright (C) Food Analysis Technology Center SUNATEC. All Rights Reserved.