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異物検査 〜異物に関する概論・検査の流れについて〜
異物とは?
 異物とは、生産、貯蔵、流通の過程で不都合な環境や取扱い方に伴って、食品中に侵入または迷入したあらゆる有形外来物を指します。但し、高倍率の顕微鏡を用いなければ、その存在が確認できない程度の微細なものは対象になりません。
食品衛生検査指針(理化学編)2004」より抜粋
 また、一般消費者が喫食時に不快感を覚える可能性があることから、原材料に由来するもの(肉の軟骨、卵のミートスポットなど)、製造・加工工程で生成または残存したもの(焼きコゲ、除去しきれなかった刺身の骨など)、保存中に生成したもの(乾燥肉の表面に析出したチロシン、ワインに析出した酒石酸塩、ストラバイドなど)、他の食品の混入(コンタミネーション)も、広い意味で異物として認識される傾向にあります。
法的な規制
 異物に関する法的な規制は、「食品衛生法」の第6条4号に記載されています。
 不潔、異物の混入又は添加その他の事由により、人の健康を損なうおそれがある食品又は添加物は、これを販売し(不特定又は多数の者に授与する販売以外の場合を含む。以下同じ。)、又は販売の用に供するために、採取し、製造し、輸入し、加工し、使用し、調理し、貯蔵し、若しくは陳列してはならない。
「食品衛生小六法 平成18年度版」より抜粋
異物の種類
 異物は、その由来及び性状等から動物性、植物性及び鉱物性異物の3種類に大別されます(表-1参照)。
表-1 異物の種類
種類 由来 具体的な事例
動物性異物 ヒト 毛髪、血液、爪、皮フ、歯
ハエ、カ、ゴキブリ、虫、虫片、寄生虫
その他 羽、毛、ネズミの糞、骨、軟骨
植物性異物 植物 植物片、種子、木片
微生物 細菌、カビ、酵母
その他 紙片、糸くず、布
鉱物性異物 金属 釘、針、針金、金属片
鉱物 ガラス片、土砂、瀬戸物、貝殻片、セメント片
樹脂 ビニール片、プラスチック片、ゴム
 これら以外に原材料に由来するもの、製造工程上での不適切な取り扱いにより生成したもの、原材料または食品の保存中に生成したもの、他の食品に由来する物質の混入(コンタミネーション)、絆創膏、タバコの吸殻、医薬品なども異物として挙げられます。
虫の外観写真
虫の外観写真
人毛の顕微鏡写真
人毛の顕微鏡写真
綿布の顕微鏡写真
綿布の顕微鏡写真
カビの顕微鏡写真
カビの顕微鏡写真
プラスチック片の外観写真
プラスチック片の外観写真
発泡スチロールの外観写真
発泡スチロールの外観写真
異物の統計
 異物の発生件数統計の例を表-2に示しました。食品の種類によりますが、全体的な傾向として虫、金属、鉱物、ヒト、樹脂に由来する異物が多いことがわかります。
表-2 異物の種類別発生件数
種類 由来 発生件数
動物性異物 ヒト 155
593
その他 61
植物性異物 植物 41
微生物 74
その他 38
鉱物性異物 金属 363
鉱物 194
樹脂 137
その他の異物 *** 200
参考資料:「最新の異物混入防止技術 食品・薬品の混入異物対策(増補改訂版)」
【異物検査の重要性】

 人の健康を損なう原因となりうる異物が食品中に混在していた場合、「食品衛生法違反」となり法的な処罰はもちろんのこと、異物混入が原因で当該商品を含めた全ての商品価値を損ねるだけでなく、引いては企業イメージダウンに繋がるおそれがあります。
したがって、食品・食物を製造・加工・流通・販売・サービス等を行う業者は、各工程において常に異物混入防止に目を光らせておく必要があり、異物の混入が確認された場合は速やかな対応が要求されます。
最適な分析による異物の特定は、再発防止やクレーム対応には欠かせません。また、トラブル発生時の原因特定を速やかに実施するためにも、製造・加工工程で使用される各種原材料、器具・部品に関してライブラリーの作成をお薦めします。
異物検査業務の紹介
 SUNATECでは、異物の種類に応じて最速・最適な分析手法を用いて異物検査を行っております。
外観・性状観察
 検査概要:到着時の異物の状態を写真で記録し、大きさ、色調、硬さをはじめとした外観及び性状の確認を行います。「外観・性状観察」により、検査の大まかな方向性を決定します。
実体顕微鏡
実体顕微鏡
爪の外観写真
爪の外観写真
ガラス片の外観写真
ガラス片の外観写真
顕微鏡観察
 検査概要:実体顕微鏡よりもさらに高倍率で観察することができる光学顕微鏡を用いて、異物が何であるかを特定することができる特徴的な構造の有無を確認します。例えば、細胞壁、導管、気孔などが確認された場合、異物は植物片であると判断できます。
光学顕微鏡
光学顕微鏡
 
細菌の顕微鏡写真
細菌の顕微鏡写真
植物片の顕微鏡写真
植物片の顕微鏡写真
FT-IR(フーリエ変換赤外分光光度計)を用いた赤外吸収スペクトルの測定
 検査概要:異物のIR(赤外吸収)スペクトルを測定することにより、主な構成成分や官能基等の特定を行います。検査対象は有機化合物が基本となります。微小な異物については、顕微鏡とFT-IRを組み合わせた顕微FT-IRにより分析を行います。
FT-IRは有機化合物の同定に最適な方法であるため、異物分析を行う上で必須の分析機器といえます。
FT-IR
透明袋破片 透明袋破片のIRスペクトル【拡大
輪ゴム 輪ゴムのIRスペクトル【拡大
ナイロン繊維 ナイロン繊維のIRスペクトル【拡大
蛍光X線(EDX)分析
 検査概要:異物に電子線を照射し発生した特性X線の解析を行うことにより、構成元素の種類の特定を行います。検査対象は無機化合物です。
針金の外観写真 針金のEDXチャート【拡大
定性試験
 検査概要:上記検査の確認試験として、または単独で実施します。当センターで実施している試験名称と検査内容を表-3に示しました
表-3 定性試験
試験名称 検査内容
ヨウ素-デンプン反応 デンプンの有無の確認
ニンヒドリン反応 タンパク質の有無の確認
アンスロン-硫酸反応 糖類の有無の確認
リグニンの定性 木片か否かの確認
バイルシュタイン反応 ハロゲン元素の確認
ルミノール反応 血液か否かの推定
カタラーゼ試験 加熱の有無の推定
ヨウ素-デンプン反応
ヨウ素-デンプン反応
カタラーゼ試験
カタラーゼ試験
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